聖心での学び
聖心には、スタディーツアーや語学研修、社会貢献活動やクラブ活動など、身近にそういう機会がたくさんありますよね。私は、1年次のときにたまたま、聖心の学生と聖心会のシスターが運営されているNGOカパティ(KAPATID フィリピンの児童自立支援団体)の活動を知って、マニラとセブのスラム街にいる子どもたちを支援するスタディ―ツアーに参加しました。百聞は一見にしかずで、実際に経験して、何もわかっていなかった自分に愕然としました。こうした経験が出来ることは非常に貴重で、国際的な社会課題への視点を拓くきっかけともなりました。他にも、インターネットがない時代に、ゼミの友人同士で情報を共有しあい、切磋琢磨しながら、いくつもの海外研修に参加しました。共通の問題意識を持ち、自然と分かち合える仲間がいて、学びの環境がある。これは素晴らしいことだと思います。
聖心のまなざし
聖心らしさという意味で、私が今もとても好きなのは「聖心スピリット」です。女性が学問を深く学んで社会に役立つ存在になる、よりよい社会の建設に積極的に関わっていく、そうしたまなざしがあって、この精神が学びのなかに息づいている。関心を閉じ込めず、社会に自分を拓いていく、それはメディアの役割と共通しています。
女性が仕事をしていくことで、世の中の風景を変える
聖心で4年間、英語英文学を学んで、卒業後、取材記者として朝日新聞社に入社しました。職場でのパソコン配備第一世代です。当然スマートフォンはありません。でもいまの若者のみなさんは、急速なデジタルの発展のなかにあって、当たり前にニュースをスマートフォンで見ています。メディアに身を置く私たちは、デジタル時代のメディアを構想、構築していかなければいけない。同時に、ネット上に情報が溢れれば溢れるほど、確かな情報を求めるニーズが高まっていることも感じています。
私たち伝統的なジャーナリズムを担っているメディアは、一次情報、つまり当事者や取材対象者、事件事故が起きた現場に行くといったことを通して、確かな情報、正確な情報を送り出すことにプライドを持っています。社会を健全に育てていくためにジャーナリズムというのはとても大事なんですね。
取材記者の同期約70人のうち、女性は10人ほどという時代。男性が過半を占める状態で、ニュースの選び方は男性視点に偏っていました。新聞のデジタル化と働き方改革で女性記者が活躍できるようになり、それまで脇に追いやられがちだった課題、たとえば育児休業やジェンダーギャップ、生理の貧困、LGBTQなどが新聞のメーンイシューに上がるようになり、同時に世の中を動かしてもいます。女性の進出が、世の中の風景を変えると思いますし、まさに女性がこれからの世界をつくっていく時代です。
昨日と同じ明日はない
私が福岡で警察記者をしていた2001年9月11日、取材を終えて夜遅く会社に戻ると、会社の皆がテレビの前に集まっていました。すぐにニューヨークの世界貿易センタービルに飛行機が突っ込んでいる映像が目に飛び込んできて、大変なことが起こったと思いました。
福岡が地盤の西日本銀行が世界貿易センタービルに支店を持っていたのですが、行員3名が行方不明になっていました。ご家族が成田に飛ぶので同行してほしいと上司から言われて、すぐに2日分の衣類とパスポート、身分証明書だけを持って成田に飛びました。成田からニューヨークまでの飛行機は全便ストップしていたのですが、数日後にご家族を乗せる便を飛ばすことになり、その便は偶然に私が予約を入れていた便だったため、同乗することになりました。2日分の着替えしか持たない状態のまま1ヵ月向こうで取材をしたのですが、そういうまったく予期しない取材に赴くことがよくあります。昨日と同じ今日はない、今日と同じ明日はない、その日その日のニュースや世の中の関心、社会の動きに即して、その日の自分の仕事がある。そこに自分の感性や自分の視点をいれられるということが、新聞社ならではの面白い仕事です。
借り物でない言葉が自分への信頼と自信に繋がる
ぜひ、社会へのまなざしがある聖心での学びを生かして、見えていない社会課題にも目を向けてください。そして社会で起きていることに対して、自分なりの考え、自分の言葉をもってください。
借り物でない言葉が自分への信頼と自信に繋がります。
まだ知らないことを知る、まだ見ていないものを見る。まだ行ったことのない国へ行く、まだ話したことのない人と話す。それには自分の世界から一歩、外に踏み出すことが必要です。そこにはSNSの中にはない、リアルな体験をともなう世界が広がっているはずです。半径1.5メートルの「外」に関心を持つ、そして一歩、踏み出す勇気を持つ、そこで見聞きしたものに心を震わせる。そうした経験を、大事にしてほしいと思います。それらの経験にもとづくエピソードは、就活の面接で、必ず血肉となる言葉として皆さんの個性を強くアピールするはずです。
「度胸と愛嬌は最強の武器」。これが何をも超えていく力になると思います。
- 英語文化コミュニケーション学科
株式会社朝日新聞社
編集局デジタル企画報道部長
英語英文学科 1996年3月卒業
※英語英文学科(現 英語文化コミュニケーション学科)
※記事及び肩書等は、2024年6月当時のものです